7大商社の中で配当利回りが一番高い4.57%(2024年9月6日時点)。他商社に比べると規模は小さいが、規模よりも①将来にわたって安定した配当を出せるのか、②利益規模を中長期的に伸ばしていけるのか、が気になる。①は高配当株投資をするのであれば言わずもがな調べるべきところであるが、②はなぜ調べるかというと、中長期的に利益成長していかないと、株主からの期待に応えられず売られてしまい、株価が下落する可能性があるから。
高配当株の売り時は難しいが、減配されて期待していた配当利回りを下回ることがあれば、そこは1つ売り時のタイミングになるだろうが、そのときに株価が下落していたら、それまで配当を貰っていたとしても結局損を被ることになるかもしれない。だから②も重要。
ということで諸々調べてみた。
1.還元方針
まずは一番気になる還元方針。
2024年5月に公表された中期経営計画の中で「DOE4.5%での配当」を掲げている。DOEとは、株主資本に占める配当総額の割合のことであるが、双日の定義では株主資本に為替換算調整勘定が含まれていないため、為替の変動によって配当がぶれることはない。そもそもDOEを方針にするということは、配当利回りや総還元性向が「純利益の何%を配当や還元に回します」という方針ではなく、「株主資本の何%を配当に回します」という安定した配当を出すための方針となっている。
具体的に言うと、株主資本1兆円とすると、その4.5%の450億円が配当に回されるわけである。ここで、「翌年度の株主資本=前年度の株主資本+当期純利益ー株主還元(配当+自社株買い)」であるから、当期純利益が株主還元の額を上回っている限り、翌年度の株主資本は前年度より大きくなり、したがって翌年度の配当額も前年度より大きくなる。つまり、利益がしっかり出てくれさえすれば、毎年増配が見込まれるため、理論上は累進配当ということになる。
2.利益成長
還元方針の最後で、純利益が還元額を上回れば翌年度の株主資本が大きくなり、結果として配当額も大きくなると述べた。では利益成長の道筋はどのように示されているのか。
利益に関する定量目標として、中期経営計画3ヵ年平均で①ROE12%超②当期利益1,200億円超の2つを掲げている。
投資計画は、中計2023の実績が約4,500億円であったのに対し、中計2026は6,000億円を計画している。
正直、総合商社の利益額は外から見ていても非常に予想しづらい。というのも、各事業会社の利益を連結したもの(もちろん単体でのトレード利益などもあるが利益規模は大きくない)が当期純利益だが、事業会社の利益を1つずつ予想するのが困難だから。
したがって、次の四半期とか1年後の成長を気にするよりも中長期的に伸びていきそうか、という点に注目して投資を行っていきたい(総合商社だけではないけどね)。
3. 投資判断
中長期的に伸びるかという視点に立つと、利益も投資金額も定量目標上はしっかり伸びていく見立て。で、この目標の実現可能性を判断するのが投資判断の鍵となる。
同社のセグメント別利益を見ると、金属や資源が多くを占めていて、市況価格に多少左右されるポートフォリオではあると思う。ただ、これから市況価格が落ち着いていく可能性はあるが、そこも織り込まれたうえでの業績見通しであるはず。かつ、市況価格がブレれば減益もあるが、逆に上振れもあるということ。
つまり、短期的に見れば下振れも上振れもあるけれど、中長期的に右肩上がりに成長してくれれば問題ないんじゃない?と思う。
で、その中長期的な右肩上がりの成長に必要なのは投資。減損を出さないようにしっかり投資さえしてくれれば買いだと思う。